9月最終の土曜、この日は台風の接近もあり、あいにくの雨でしたが、秋を感じさせるひんやりとした涼しい一日となりました。
博多駅から承天寺通りに入ると、あちらこちらに着物を召した方々の姿が。いつもとは違う雰囲気の中、博多千年門に掲げられた和の博多オリジナル巨大暖簾が出迎えてくれました。
この日は和の博多オープニングイベント。10時から19時まで、承天寺通り界隈で様々なイベントが開催されています。通り沿いには「和の屋台」。日本酒や蒲鉾、豆腐生チョコ、お土産に喜ばれそうな博多水引まで、小さなショップが並び、たくさんの方が足を止めて覗いていました。
メインのイベント会場となるのが、承天寺。1241年創建の歴史ある寺で、伝統芸能などのステージイベントが開催されますが、まずは何より普段は開放されていない方丈(本堂)に入れること自体が貴重な体験。荘厳な造りに加え、枯山水の庭園の美しさ。これを見るだけでも価値があります。
本堂内ではステージに加え、和のグッズの販売やワークショップ、着物レンタル&撮影も。中をぐるりと見学しながら、博多織や博多人形、博多曲物など博多が誇る和の魅力に触れることができます。
さて、メインのステージですが、こちらも老若男女たくさんの方に来場いただき、津軽三味線、人形浄瑠璃、日本舞踊&筑前琵琶、弦楽四重奏といった博多を超えて日本の様々な文化を目で耳で感じられるひと時を楽しんでいただきました。出演者の方々もお寺でのパフォーマンスに、いつもとは違う緊張感を感じられたのではないでしょうか?
今回は「博多の魅力の伝え方」を論じるトークイベントも目玉のひとつ。今年777周年という記念の年を迎えた博多織工業組合理事長・岡野博一さんをファシリテーターとして招き、2名のゲストとともに意見を交わし合いました。
博多は歴史ある伝統・文化が残る地域。そこで博多織をはじめ、伝統工芸品を産地ブランドとして、これからどのようなスタイルで国内だけでなく、広く世界にむけて発信していくか、その方法を探るのが今回のトークイベントのテーマです。
1人目のゲストは、東京五輪招致PR映像も手掛けた「KOO-KI」の映像ディレクター・上原桂さん。博多織777周年のPRムービーも上原さんの作品です。「777周年の映像では、“はかたおり”を“かたおりは”と一文字ずらした言葉を繰り返し発しています。ある時“はかたおり”という言葉に気づく。織り続けて、織り続けてきた歴史が、博多織を知らない人に伝わった時のイメージに繋がります」。
大阪出身の上原さん、博多には“地に足のついた文化感”を感じるそうで、博多織もいい意味で緊張感をもたせる存在だと言います。「博多織は名脇役。一本独鈷のシンプルなデザインも格好いいですよね。ジーンズのサイドに一本スッとあの柄が入ってるものがあれば、ほしいです!」
2人目のゲストは、インスタのフォロワーが19万人を超えるという福岡を代表するインフルエンサー・西本早希さん。その発信力の高さに期待を寄せて、岡野理事長が博多織の着物を準備し、好きなものを選んで着ていただきました。
チョイスしたのはシックなカラーの博多織のお召しに、献上柄に桜をあしらった八寸名古屋帯。「成人式以来の着物です。シンプルなデザインなので、普段通りの髪型やアクセサリー使いでもしっくりきますね。私服に近い感覚で着れるのが意外でした」と西本さん。
「レンタルできたり、着る機会が増えたりすれば、身近なものに感じそうですよね。今度友人の結婚式で着たいです」。「普段のビジネスシーンで着物を着ることがあり!というくらいに浸透したらいいですよね」。「博多織は博多人形に比べると、作家さんにフォーカスできていない。スター的な人が登場すると面白いのでは」。
そんな意見が、ギャラリーからも声が上がり、博多織のこれからの課題と可能性の高さを感じさせるトークとなりました。なによりアウトプットの達人である2人のゲストに博多織を知ってもらう機会ができたことが大きな収穫です。バカラやエルメスのように、産地ブランドが世界的なものになったように、博多の工芸品に大きな期待を寄せて。これからも和の博多の魅力を発信していきます。
最後になりましたが、お足元の悪いなか、イベントに足を運びいただきありがとうございました。着物の方が多くいらっしゃったことで、和の魅力がより一層高められたと思います。11月4日まで続く、和の博多。まち歩きやスタンプラリーもこの機会に是非お楽しみください。